『色には人の購買を動かす力がある。』

★★瀧春樹様プロフィール★★

ホンダシビックをはじめ、プレリュード、シティなど、70年代後半から80年代の全四輪車の市場導入・広告宣伝・
広報戦略を統括。なかでも、英国バンド「マッドネス」を起用したシティのテレビCMでは、世界最高峰の「クリオ賞」をはじめ、国内外の主要広告賞を総なめにした。
81年原宿サンアド常務取締役、85年ウッド代表取締役に。2000年にはイタリアを
拠点としてヨーロッパ全域を担当する「ウッド・マーケティング&ストラテジー社」をローマに設立。ホンダ・スクーターSHシリーズなど、全ヨーロッパ二輪販売台数4年連続1位2位を独占するヒット商品を創出した。
著書に小説「帰還 ダモイ」(日経BP)など。

●その人のアイデンティティが現れるのが色

瀧様はこれまで車の宣伝に大きく尽力なさってこられたと思います。宣伝をする際に、色についてはどのように考えてこられましたか?

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徳永

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滝様

車は私たちにとって社会的な移動手段です。

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滝様

と、同時に、人にどう思われたいか、車のタイプや色によって自分を表現する一面も持っています。

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滝様

と、同時に、人にどう思われたいか、車のタイプや色によって自分を表現する一面も持っています。

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滝様

例えばヨーロッパと違って、人と違うことをしていると思われたくないという意識が強い日本では、無難な白・黒が車のカラーの代表格にあります。

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滝様

一方で、赤やその他原色に近いはっきりした色の車も一定数の需要があります。

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滝様

その理由としては、赤を選択することで若さを表現できたり、他の人と被らない色を選択することで大多数として括られるのを避けることができるから、といったことが考えられるでしょう。

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滝様

このように、色は表現したい自分、社会的な自分の構成要素の1つとなり得ると考えられます。

●“イメージ戦略”に有効な役割を持つ色

どんな色が売れるか、市場を読んで効率よく商品を売ることが大切だと思いますが、一方でApple社が最新のiPhoneを発売する多くの場合、様々なカラー展開をしています。これにはどういった意味があるのでしょうか?

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徳永

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滝様

イメージ戦略も大きいでしょう。

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滝様

あれだけのカラーバリエーションがあることで客にとっては最適な一台を見つけやすい、つまり背中を強く押すことができるでしょうし、その商品に対して良いブランドイメージを形成していってくれる点があります。

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滝様

ただ、色数が増えるとコストが大きく膨らみ、どの企業もできることではありません。そのため商品のカラーには、それぞれの色によって違った役割を持たせるべきと言えます。

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滝様

つまり“魅せる色”・“安定して売れる実用的な色”・“圧倒的な数を売るための色”というような役割がそれぞれに与えられているのです。ある色だけ納品遅れを生じて他社に奪われてしまったり、また別の色だけが在庫の山になったのでは適切なビジネスとは言えません。

●“固定観念”としての色

瀧様はこれまで社会の流れを敏感に感じ取られてきたと思うのですが、最近の日本人の色に対する意識に変化はあると感じますか?

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徳永

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滝様

近年は文房具やキッチンまわりの道具など、よりカラフルになってきたと思っています。

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滝様

ですがまだまだ“この商品ならこの色”といった固定観念が拭いきれていないと思います。技術の発展とともに機能の格差は小さくなっているため、その商品が持つデザインなどのユニークさ、とくに新規性に重きが置かれています。

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滝様

今後は固定観念を覆すような色・デザインが生まれてくると思いますが、そもそも日本人は色に対して抜きんでた感性を持ち合わせています。江戸時代に庶民の贅沢を制限するために奢侈禁止令が出され、着用できる衣服の色に制限がかけられました。

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滝様

それでも彼らは制限される中でもより多くの色を楽しむために「四十八茶、百ねずみ」と言われるほどに色を細分化し、様々な色を作り出してきました。日本人の感性はとても繊細で、世界に誇れるものだと思いますね。

●インタビューを終えて

私はこれまで色を意識的に捉えたことはありませんでした。

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徳永

色は色であり、それ以上でもそれ以下でもないと考えていました。ですが瀧様のインタビューを通して、色はそれ自体は色であっても、それを通して様々なメッセージを人に与えようとしているのだと感じました。

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徳永

世の中の見方について瀧様は「世界は胎動のようにじっくりと、でも確実に日々変化しています。しかしあるテーマを持って意識的に世界を見ることで必ず見えてくるものがあります。見ることを惜しまないでください。」とおっしゃっていました。

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徳永

これまで全く意識していなかった色ですが、これからは少し意識してみることで、これまで気づけなかった誰かの思い・声を聞くことができるのかもしれないと考えるようになりました。

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徳永

一部敬称略